売上が1,000万円を超えた時に個人事業主が注意すべきこととは

(写真=NicoElNino/Shutterstock.com)

個人事業主にとって売上高が1,000万円を超えるというのはひとつの区切りを迎えることであり、達成感のある数字でもあります。しかし、売上高1,000万円というのは消費税の課税事業者に該当するかどうかの基準となっているため、注意が必要です。

「このまま個人事業主でいるのか」「法人にしたほうが良いのか」を考える契機にもなります。ここでは、個人事業主が売上高1,000万円を超えた時の判断基準について解説します。

意外と複雑な消費税の仕組み

消費税と聞くと、代金に8%などの税率を掛けて計算するだけのシンプルな税金という印象を持っている方が多いかもしれません。しかし、消費税は税金を負担する者と税金を納付する者が異なる「間接税」であり、実際に納税する個人事業主にとっては意外と複雑な処理が要求されます。

消費税の基本的な仕組みは、お客様から受け取った消費税から仕入や経費に含まれる消費税を差し引いて差額を納付するというものです。ただし、売上などの取引には「課税」、「免税」、「非課税」、「不課税」といった分類があり、これらを区別して処理しなければなりません。

例えば、同じ家賃収入でも事務所として貸した場合は課税売上、住宅として貸した場合は非課税売上になります。ほかにも法務局で買った印紙は非課税仕入であるのに対して、金券ショップで買った印紙は課税仕入になるというような細かな違いもあるのです。納税する消費税額を計算する方法にも、原則課税方式(個別対応方式)、原則課税方式(一括比例配分方式)、簡易課税方式といった複数の方法があります。

これまで消費税の納税義務が免除されていた個人事業主も売上高が1,000万円を超えてくると、課税事業者に該当する可能性があるのです。税金支払いの面でも、事務処理の面でも負担が増えるため注意が必要です。

課税事業者の具体的な判断基準は?

課税事業者の判定は、個人事業主の場合、前々年の1~12月(基準期間)の課税売上高(税抜)が1,000万円を超えるかどうかで行います。課税売上高は税抜で判定されるものの、免税事業者であった場合、たとえ得意先から消費税に相当する金額を受け取っていても、その総額が税抜の売上と判断されるので注意しましょう。

また、一般に輸出売上は免税取引とされますが、免税取引は「0%課税」という位置づけであるため、上記の課税売上には含まれます。AmazonなどのECサイトを通じて海外向け販売を行っている人は注意が必要です。

基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、前年の1~6月(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超える場合には課税事業者となります。ただし、課税売上高に代えて給与等支払額で判定することもできますので、給与等の総額が1,000万円以下であれば課税事業者にはなりません。

「法人成り」という方法

上記のような消費税に関する判断に加え、売上高が1,000万円を超えてくる場合、所得税の負担を考慮して法人を設立することも視野に入ってきます。個人事業主から法人に移行することを「法人成り」と呼びますが、この法人成りには明確な金額基準があるわけではありません。なぜなら、法人で事業を行ったほうが税務上有利になるかどうかは最終的な所得や家族構成によっても異なるからです。

売上高1,000万円といっても、業種によって最終的な所得の水準はさまざまです。例えば、ほとんど仕入や経費がかからないコンサルティング業をメインにしている人であれば、事業所得が1,000万円近くになる可能性があります。一方、ネット通販で最終利益率が15%程度になるという人であれば、事業所得が150万円程度になるでしょう。

一般的には、所得が高くなればなるほど、法人成りした方が税金対策としては有利になります。これは、所得税の税率が所得水準に応じて高くなる「超過累進税率」という仕組みをとっているためです。なお、2017年度の所得税の最高税率は45%となっています。

仕入や経費を差し引いた後の事業所得が1,000万円を超え、基礎控除や青色申告特別控除以外に控除できる金額があまりないという人もいるでしょう。その場合は、所得900万円超1,800万円以下に該当し、所得税率が33%となる可能性もあります。

これに対して、中小法人の法人税率は所得800万円までは15%、それを超える部分は23.4%(2018年3月31日までに事業開始をした場合)となっています。つまり、このような場合には法人成りすることによって税金の支払額を抑えることができる可能性が高いというわけです。

所得税率だけでは判断できない

ただし、これらの判断は所得税と法人税だけの比較ではなく、個人の住民税、健康保険料や年金保険料、法人を設立してからの法人住民税、事業税などのトータルで考える必要があります。目安としては、収入から仕入や経費を差し引いた所得に相当する額が800万円程度になってきたら、税理士などの専門家に法人成りの相談してみるのもひとつの方法でしょう。個人事業主にとって1,000万円の売上達成は喜ばしいことです。

しかし、個人事業主と法人の税制の違いを踏まえて、専門家と相談することも大切といえます。売上増加を目指しながら、節税対策も視野に入れて事業拡大をしていきましょう。

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